診療のご案内

前十字靭帯損傷

前十字靭帯損傷とは

前十字靭帯は膝関節内の中央部で後十字靭帯という靭帯と交差するように存在し、大腿骨(ももの骨)の後方から脛骨(すねの骨)の前方に向かって付着しており、膝関節の前後や回旋の安定性を担っています。

 前十字靭帯損傷は急激な方向転換や急停止をしたり、膝の外反を強制された際に起こります。もし前十字靭帯を損傷すると損傷直後は強い痛みを伴い、関節の中に血がたまります。損傷時にはブチッという音が聞こえる場合もあります。前十字靭帯損傷で一番問題になる症状は膝くずれと言われる不安定性です。これは多くの場合は日常生活レベルでは起きませんがスポーツなど活動性が高まった際に起こります。また未治療のままでいると半月板や軟骨に負担がかかり二次性の半月板損傷、軟骨損傷を起こす恐れがあります。尚、前十字靭帯の完全損傷が生じた場合、損傷靭帯自体が自然治癒して元どおりの機能を再獲得する見込みはほとんどありません。

診察の流れ

前十字靭帯損傷が疑われた場合はMRIという画像検査を行います。この検査では前十字靭帯断裂の有無だけではなく、半月板や軟骨損傷、その他の靭帯損傷、骨挫傷などの有無を知ることができます。

前十字靭帯損傷が判明した場合は患者様それぞれによって治療方針が決定されます。日常生活に支障がなく、スポーツ復帰を希望しない人には大腿四頭筋とハムストリング(膝屈筋群)の筋力強化訓練をします。スポーツ復帰を希望する人や日常生活動作が傷害される人には手術的治療が選択されます。当院では年間約50~70例の前十字靭帯再建術を行っております。

手術を行う時期としては損傷直後に行うのではなく、膝の可動域が回復してから行っています。また小中学生は骨の成長の度合い、中高生などは部活の問題、受験の問題、社会人は仕事、トップアスリートはシーズンとの兼ね合いなどもあり個々の希望も考慮に入れて手術時期を決定しています。

前十字靭帯損傷のリハビリテーション

前十字靭帯損傷に対する治療において最も時間を費やし、そして非常に重要になるのがリハビリテーション(以下、リハビリ)です。膝の安定性は靭帯のみならず、筋力が非常に大きな役割を担っており、いわば靭帯と筋力の共同作業で安定性が得られています。手術が無事に終わってもリハビリが不十分ではフルパフォーマンスでプレイができず満足にスポーツ復帰ができないだけでなく、再建した靭帯の再断裂をきたす可能性があります。当院では前十字靭帯損傷の治療法、リハビリ法を熟知した多くの理学療法士を配置しており、ほぼマンツーマンでリハビリを行っております。

手術をした場合、リハビリではまず、大腿四頭筋、ハムストリングスを中心とした筋力訓練、筋肉の再教育(筋力だけついてもバランスが悪かったり、上手に使えなければ意味がありません)、などをします。スポーツ復帰時期が近づくにつれて、それぞれのスポーツ種目特有の動きに合わせたプログラムが追加されていきます。術後3~4週間は入院しながらリハビリをし、その後は外来でリハビリを定期的に行っていきます。スポーツ復帰は再建靭帯が成熟する術後8ヵ月とし、筋力も反対側(右膝を手術した場合、左下肢)の80~85%まで回復を目標にします。